一般に“ウイルス”と言えば、インフルエンザウイルスに代表される生物学的なウイルスのことであるが、この世にコンピュータウイルスが登場してからは、単に“ウイルス”と言っただけではどちらを指すのか曖昧になってしまった。もちろん多くの場合、前後の関係から判断してどちらを指すかは容易に判断できることが多い。しかし、たとえば文章の中に“ウイルス”という語が出てきたとき、どちらを指すのか分かるまでにはかなり文脈をたどらなければならないこともある。そこで、正確さを重視してコンピュータの場合には「コンピュータウイルス」と書くことにしたのである。
ところが、コンピュータウイルスの知識が世間に広まるにつれて、特に断らなくても“ウイルス”と言えばコンピュータウイルスを指すと理解されるようになってしまった。つまり、生物学的なウイルスよりもコンピュータウイルスの方が、我々には身近な話題になってしまったのである。これが良いことなのかどうかは分からない。
そこに、新型インフルエンザウイルスが登場し、世間を騒がせる事態になった。そして生物学的ウイルスの方が、再び我々にとってより身近な存在に返り咲いてきたのである。
これからは、単に「ウイルス」と言えば、インフルエンザウイルスが流行る時期は、インフルエンザ等の生物学的ウイルスを指し、コンピュータウイルスが猛威を振っている時期はコンピュータウイルスの方を指す、と巧みに区別しなければならないことになった。これは、かなりやっかいなことである。
そこで、後発のコンピュータウイルスの方が一歩譲って、これからはコンピュータウイルスは eウイルス と書くことにしてはどうかと思うのである。「eブック」、「eラーニング」、「eメール」、「eコマース」等の前例があるではないか。
しかし生物学的ウイルスの複雑・精緻な構造に比較して、コンピュータウイルスの構造はいかにも粗雑である。あれは“ウイルス”などと呼べる代物ではなく、精々が“雑菌”程度のものではないかと思う。世のクラッカー達は、あんな雑菌程度のもの(「e雑菌」と呼ぶべきか?)を喜々として作り、自慢げにまき散らしたりしている。まさに笑止千万!ではないか。
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