── サトウハチロー
私の本棚を紹介します。第5回は、
サトウハチローと言えば、詩人、童謡作家、あるいは小説家として知られていますが、少年少女向けの小説家というのが私の印象です。しかし私の本棚にはここで紹介する詩集「おかあさん」しか置かれていません。サトウハチローの少年少女向けに書かれたユーモア小説は、ほとんど少年少女雑誌に連載される形で読まれていたからです。
名前は、サトウ・ハチローと書かれる場合もありますが、本人はサトウハチローと表記していたようです。以下に示すように、子供の頃からよく見慣れている独特な字体です。
サトウハチロー
この本は、実は3冊から構成されているのです。
(1)詩集 おかあさん(Ⅰ)
(2)詩集 おかあさん(II)
(3)詩集 おかあさん(III)
詳細は【解説欄】を参照してください。
【解説欄】
▼「詩集 おかあさん」の不思議
「おかあさん」の詩集全集は、外函の豪華さに比べ内容の3冊はかなり質素な装丁になっています。どちらかと言うと“不釣り合い”と言ってもいいくらいです。各冊の版数はすべて異なっていて、(1)は287版、(2)は232版、(3)は222版となっています。
最初の詩集(1)が一番よく売れて(2),(3)と次第に発行部数が落ちるのはよくあることだと思います。これは(2),(3)がかなりの数売れ残ったので、後から函入りの本を発行して(2),(3)をまとめて売りさばき、全体の発行部数の数合わせしたのではないかと推測されます。
なお、サトウハチローの全作品の一覧は、国立国会図書館デジタルコレクションから“1953年”のデータを参照すると分かります。少年少女向けの小説もすべて網羅されているようです。ただ、タイトルだけで、内容は個々の本に当たらねばなりません。
たとえば、手持ちの(4)の少年クラブ(昭和28年4月号)の目次の一部を以下に示します。
少年クラブ(昭和28年4月号)
4月号の目次
ここに、写真小説「少年6君」という作品が載っています。挿絵がすべて写真になっている点が斬新ですね。
(5)の少年クラブ(昭和28年7月号)では、
少年クラブ(昭和28年7月号)
以下に示す目次から、少年詩「ちょうちょうの歌」が掲載されていることが分かります。
7月号の目次
その「ちょうちょうの歌」の全文を以下に示します。
「ちょうちょうの歌」の全文
▼本の詳細
(1)詩集 おかあさん(I):昭和37年5月18日発行, 昭和42年6月30日 287版 定価 350円 サトウハチロー著 鈴木信太郎絵 株式会社 オリオン出版社
(2)詩集 おかあさん(II):昭和37年5月18日発行, 昭和42年6月30日 232版 定価 350円 サトウハチロー著 鈴木信太郎絵 株式会社 オリオン出版社
(3)詩集 おかあさん(III):昭和37年5月18日発行, 昭和42年6月30日 222版 定価 350円 サトウハチロー著 鈴木信太郎絵 株式会社 オリオン出版社
(4)少年クラブ:昭和28年4月号 第四十巻第五号 定価 98円 株式会社 大日本雄弁会講談社
(5)少年クラブ:昭和28年7月号 第四十巻第八号 定価 95円 株式会社 大日本雄弁会講談社