── 令和の“令”は "Rake" の "[rei]"
令和の“れ”は "Reiwa" の "[rei]"
▼令和の読み方
“平成最後の…”という表現が流行っていると思ったら、早くも“令和最初の…”という表現に切り替わってしまったようである。そして令和最初の月が過ぎようとしている。
私はテレビで元号発表時の様子を見ていたのだが、令和という新しい元号を聞いた直後に 令和 の読みは「れいわ」ではなく「りょうわ」とすれば良かったのに…と思った。令には「りょう」という読みの方もあるが(例:律令)、こちらの方が「当たりが柔らかい」ような気がしたのである。
令を“れい”と発音するのに私は少し抵抗があった。その理由が何なのか、自分の頭の中でもまだよく整理されていない。それをここで整理して説明してみようと思う。
▼日本語にない発音
幼い頃から日本語の“れ”に慣れ親しんできた私めは、長ずるにおよび英会話で“L”と“R”の区別(発音の仕方と聴き分け方)で苦労しなければならなかった。日本語の“れ”の発音は、実はそのどちらとも異なっているらしい(*1)。
【注】(*1)
L の発音
・舌の先を、上の前歯の付け根に当てる(例:Lake)
R の発音
・舌の先を、口の中のどこにも触れさせずに奥の方へ(例:Rake)
ら,り,る,れ,ろの発音
・舌の先を、上の前歯の付け根より更に上で撥ねる
なお、発声法については以下の説明が参考になる。
https://mysuki.jp/pronunciation-rl-110
日本人には区別が難しい発音のようである。たとえば、
Lake / Rake
Lane / Rain
Lead / Read
Light / Right
Load / Road
これらの単語の違いを発音だけから直ちに判別できるとしたら、それは相当な英語の使い手であるに違いない。
それでも、自分が日本語を使いこなしていて不便を感じないのは、日本には“L”と“R”の発音を使い分ける必要のある事物は存在しないということではないか。存在しないから発音の必要もない。つまり日本語の“れ”は、似たような発音を一括りに飲み込んでしまうような大雑把な発音なのである。そこに、またまた大雑把な“れ”で始まる用語(令和)が新たに登場してしまった。これは英語教育のためにも望ましいことではないと思う(どうやら私は “れ”アレルギー なのかもしれない)。
日本人はくちびるを余り開かずにボソボソと話す傾向があるから“ら,り,る,れ,ろ”の発音で細かい変化が生ずる可能性が少なかったのであろう(*2)。
【注】(*2)こういう状況は腹話術師という職業には都合が良いのかもしれない。
口角泡を飛ばして喋る日本人が少ないということは、生理学的な立場から見ると、呼吸器系の感染症に(欧米人に比べて)罹りにくいという利点もあるらしい。
しかし私は、自分の発する言葉を正しく相手に伝えようとする熱意があるのなら、もっと口角を開いて発音しなければいけないと思う。自分の発する英語が相手に伝わらないという苦い経験を重ねてきた私は、強く強くそう思うのである。
日本語の“れ”の発音はくちびるを開かなくても良いので、実にいい加減な発音である。英会話では必要とされないとさえ思う(少なくとも私が話す英語レベルでは)。
そんなことを考えている内に私は、気が付くと「令和」という言葉を発するとき一瞬躊躇するようになってしまっていた。元号を滑らかに発声できなくなってしまったのだ。これはまずいと思い、“れ”アレルギーを脱するためにしばし訓練が必要であった。
▼新しい語を導入する
日本人の英会話力は、お世辞にも良いとは言えない。これまでの学校教育に問題があるというのは大方の認めるところであるが、それは別にしても“L”と“R”の発音の問題だけは、日本人特有のもので避けられない障害になっている。小学生からの英語教育必修化に備えて、発声法だけはしっかりと身に付けておくべきではないかと思う。
日本では昔から、雑音の多い所で特定の文字を相手に正確に伝える方法として、「でんわの“で”」とか「みかんの“み”」などと大声で伝える方法が取られてきた。語学教育でもそういう教育法が有効なのかどうか分からないが、正しい発音の例として他の用語を引用するのは有効ではないかと思う。例えば英語なら「"Rake(くま手)" の "[rei]"」とか「"Lake(湖)" の "[lei]"」のように発音を伝えるのである。
“L”と“R”に相当する発音が日本語に存在しないのが教育上の障害になっているのなら、そういう語を新しく造ればよいのではないか。しかしだからと言って既存の語をある日突然別の発音に変えてしまう訳にはいかない。ところが、平成最後の年の4月に、なぜか絶好の機会が訪れることになった。「令和」という新しい語が突然姿を現したのである。これを利用しない手はなかろう。
「令和」という言葉は、今まで(正確には、西暦2019年4月1日 午前11時頃まで)日本ではほとんど使われてこなかったと思う。これからは日々使われる言葉になるのだから、「令和」の正式な発音は [reiwa] なんですよ、と小学生の段階からしっかりと教え込むことにしてはどうか。そうすれば、「"令和" の "[rei]"」のように用いて発音の仕方を正確に教えることができるようになる。
▼具体的な練習法
令和の“令”は "Rake" の "[rei]"
令和の“れ”は "Reiwa" の "[rei]"
これを繰り返していると、その内に自然と
令和の "[rei]"
と発音できるようになると思います。どうです? 貴方(貴女)も試してみませんか。
発音練習では、直前に「ゥ」を軽く(軽く! ですゾ)挟むと発音しやすくなります。「ゥ」を発音するときの舌の位置が、絶好の位置になるのです。
令和の "ゥ[rei]"
段々うまく発音できるようになったら「ゥ」を省略すればよろしい。
健闘を祈ります。
▼まとめ
令和の読みが「れいわ」と決まってしまった以上、これを変えることはできない。しかし発音の仕方まではまだ変更の余地があるのではないか。
たとえば、国内では「令和」と発音する([leiwa]に近い発音)。
海外向けには「Reiwa([reiwa])」と発音することにしてはどうでしょう。
日本では、国内では「アメリカ([amerika])」ですが、海外向けには「America([am'erika])」と器用に使い分けられています。トランプ大統領が選挙民を対象にした演説で発している音声をテレビで見たり聴いたりしたことがあるでしょう?
「アメ'リカ ファースト!」【音声ボタン】とか
「アメ'リカ([am'erika])」とか、
あの特徴ある声で叫んでいますよね。この発音は大変参考になります。
トランプ大統領の発する言葉は、そのすべてを反面教師として捉えなくても良いのです。ときには役に立つ言葉もあるのですから(えぇ、私もたった今 気が付いたんですけどね)。
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